税務調査がやってくる確率とは!? 個人と法人でどれだけ違うのか【2019年版 実地調査率】

法人と個人事業主とどっちが危ない?

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もちろん、その人の状況により千差万別ですが、国税庁が発表しているデータからある程度の類推はできます。

また、私の国税調査官の経験からも言えることがあります。

今回は、国税庁が毎年発表している「国税庁レポート」というもののデータを使って、税務調査が来る確率について考えてみたいと思います。

(注:数学的な厳密な意味での「確率」ではなく、世間一般の人のイメージでの「確率」です。そこは突っ込まないでね(笑 )
 

使用するデータは「国税庁レポート」

毎年7月頃に国税庁が発表しています。

現在の最新版は、「国税庁レポート 2019」です。
今回は、法人と個人事業主を比較するために、法人は「国税庁レポート 2019」からデータを引用し、個人事業主は「国税庁レポート 2018」からデータを引用します。

公の文書なので、文章としてはつまらないですし、機微な情報は当然ありませんが、国税庁の何となくの方針は読み取れます。

この1年間どんなことに重点を置いて、今後何に着目していくのか、というところが何となくはわかります。

興味がある方はこちらから読んでみてください。

国税庁レポート 2019

国税庁レポート 2018
 

所得税の課税状況

「平成29(2017)年分」と書かれていますので、平成30年(2018年)の3月申告期限分のデータです。(国税庁レポート2018より)

最新のデータではないですが、法人と比較するために1年前のデータを使っています。

実は、所得税の場合、個人事業主とサラリーマン、年金受給者などが一緒のデータになっているので、ここから正確な個人事業主の数を導き出すことは、困難です。

確定申告者数が2,222万人とありますが、これはサラリーマンの医療費控除などの還付申告を含むので個人事業主の数ではありません。

うち、1,306万人が還付申告、これはサラリーマンの医療費控除の申告も含みますし、個人事業主が赤字で何かの報酬で源泉徴収されていた分の還付申告も含みます。

うち、納税申告が638万人で、うち「事業所得者」が168万人です。
この「事業所得者」は、事業所得を得ている人ですが、他の「不動産所得者」や「雑所得者」にも、いわゆる個人事業主が含まれるので、正確な個人事業主の数はわかりません。

確定申告者数から還付申告者数を引くと、
 2,198万人−1,283万人=915万人
となり、納税申告の641万人と一致しませんが、ここには、赤字だけど申告義務がある個人事業主などが含まれていると考えられます。

今回は、便宜上、「事業所得者」「不動産所得者」「雑所得者」の合計数355万人を個人事業主の黒字申告数と考えて比較していきます。
 

法人の申告状況

平成29事務年度とあるのは、平成29(2017)年から平成30(2018)年のデータという意味です。(国税庁レポート2019より)

これはわかりやすいですね。

法人数(株式会社、合同会社などの会社と社団法人、財団法人、さらに人格なき社団も含めた数)が約300万法人あって、そのうち91.2%が申告しています。

つまり、残り8.8%の約30万法人は、無申告か破産手続き中ということになります。

驚くべきことに、黒字申告は34.2%(約99万法人)しかなく、約65%が赤字申告です。

個人事業主の場合、正確な数字は国税庁レポートからは読み取れませんが、やはり赤字は7割程度と言われています。
 

個人事業主の調査割合(実地調査状況)

申告所得税について実地調査(いわゆる税務調査で反面調査を含まない)の件数は、7万3千件で、平成29年のデータの個人事業主の黒字申告数(355万人)を分母にすると、実地調査率は、約2.1%です。
(あくまで黒字申告に対する割合)

そのうち申告漏れや所得隠しが指摘されて、修正申告か更正があった件数が、6万件です。

つまり、税務調査があったら、約82%が何らかの指摘を受けて修正申告等をしているということになります。

税務調査が来たら8割が税金を追徴されるというイメージなので、ほとんどやられるということですね(笑
(笑い事じゃない!)

そして、1件あたりの追徴税額は、130万円です。
 

法人の調査割合(実地調査状況)

法人の場合、実地調査の件数は、9万8千件です。

申告件数(2,896千件)に対する実地調査率は、3.4%ですが、うち黒字申告件数(約99万件)に対しては、9.9%と跳ね上がります。

つまり、単純に考えると、黒字申告の場合、約1割の確率で税務調査が来る、ということもできるわけです。

そうすると、申告内容の時効は5年(所得隠しがあると7年)ですので、5年間黒字申告をし続けると、
 9.9%×5年=約50%
つまり、約5割の確率で税務調査に出会うと言うこともできます(あくまで単純化した場合)。

よく言われる「会社には10年に1回は税務調査が来る」という都市伝説的な噂は、こういうところからも言われていたのかも知れません。

そして、税務調査のあった場合の申告漏れと所得隠しの件数は、7万3千件で、約74%です。

個人事業主よりは若干、修正申告等の割合が低い状況です。

しかし、法人で規模が大きいので、1件あたりの追徴税額は、1,024万円と跳ね上がります。
 

法人の方が税務調査は来やすいのか?

以上の単純な比較で見ると、個人事業主の黒字申告に対する税務調査の割合は、2.1%であるのに対して、法人の黒字申告に対する割合は、9.9%です。

「法人の方が、約5倍も税務調査が来やすいの?」
と思われるかもしれませんが、一概にはそうとは言えません。

なぜなら、個人事業主と法人とでは、税務調査の選定で比較される他人の売上規模が大きく異なるからです。

例えば、個人事業主で売上1億円、利益1千万円は、結構目立ちます。(もちろん業種や所轄税務署によって異なります。)

しかし、法人で売上1億円、利益1千万円は、大した金額ではなく、他の売上規模が大きい法人に埋もれてしまうことが多いです。

つまり、同じ売上規模、利益規模でも、個人事業主と法人とでは目立ちやすさが異なるのです。
 

「目立つ奴が叩かれる!」という大原則

国税庁の方針は「一罰百戒」です。

目立つ奴を叩いて、その他大勢の戒め(見せしめ)にする、というのが大原則です。

ですので、ある程度の売上規模になったら、個人事業主のままよりも、法人化した方が、相対的に目立たなくなる、ということは言えます。
 

法人には「おいしい節税」がいっぱい

さらに法人には、個人事業主では使えない「おいしい節税」(もちろん合法です!)がいっぱいあります。

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国税調査官の性格も調査の仕方も思想も違う!

面白いことに、所得税の調査を行う個人課税部門の国税調査官と、法人税の調査を行う法人課税部門の国税調査官とでは、性格も、調査の仕方も、思想も違います。

国税調査官は、採用後に長期間研修があり、研修の最後に、自分の本籍とも言うべき所属が決まります。

個人課税部門、法人課税部門、資産課税部門、管理徴収部門の4つのどれかに自分の本籍が決まる感じです。

一時的に他部門に異動になることはあっても、基本的にこの本籍は移動しません。

ですので、この部門毎に調査の仕方も違いますし、私たち納税者に対する対応の仕方、性格、思想なども違ってくる、という面白い現象が起こります。

ちなみに、これは、中央省庁でも同じことが起こっています。

財務省の人、経済産業省の人、警察庁の人、文部科学省の人、それぞれに特徴があって、研修などで他省庁の人と接していると、もろに自分の省庁の性格になっています。

組織は人を育てるともいいますが、性格や思想も組織の影響を受けて染まっていきますね。
 

節税の本質は「コミュニケーション」

なぜ私が、このような情報を発信しているのか?

こちらの動画で私の正体が明かされます。

 
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