『仮想通貨の税金』を元国税がホンネで語る!

ビットコインに代表される「仮想通貨」「暗号通貨」は、2017年に爆上げしました。
短期間で「仮想通貨長者」がたくさん生まれました。
億万長者まで行かなくても、
「年収分、儲けてしまった…どうしよう…」
という人は結構いると思います。
「ビットコインで儲かっちゃったけど、税金どうなるの?」
「確定申告しないと、ヤバい? 何とか節税できない?」
「利益が少しぐらいなら確定申告しなくても大丈夫?」
「これから仮想通貨のICOでメッチャ儲かる予定なんだけど、どうすればいい?」
などなど、儲かったら儲かったでたくさん悩みや心配事が出てくると思います。
儲かってないときには全く気にならなかった『税金』の心配がストレスとして襲ってきます。
「何とか税金を逃れられないか?」
なんて考えている人もいるかもしれませんね。
そんな人が税理士に相談したら「正しく申告してください。」としか言われません。
当たり前ですね。税理士は申告させるのが仕事ですから。
でも、
「このくらいなら申告しなくても大丈夫なんじゃない?」
とか、
「この取引所なら海外だからバレないんじゃない?」
「ここんとこ、本当はどうなのよ?」
というような税務署や税理士には『聞くに聞けない本音』があると思います。
そんな仮想通貨・暗号通貨の税金の『本音』に対して、元国税調査官がホンネでお答えします。
「税理士さん」にとっては、立場上、言いづらいこともホンネで話してみたいと思います。

仮想通貨の所得とは?

国税庁は、2017年9月にビットコインの課税関係についてのタックスアンサーを発表しました。
[surfing_su_note_ex note_color=”#f4f4f4″][surfing_su_quote_ex cite=”国税庁HPタックスアンサー” url=”https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1524.htm”]No.1524 ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係
[平成29年4月1日現在法令等]
ビットコインは、物品の購入等に使用できるものですが、このビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となります。
このビットコインを使用することにより生じる損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されます。
[/surfing_su_quote_ex][/surfing_su_note_ex]
それまでは、仮想通貨の取引に関する税金について、一切公式発表がなかったために何の所得に区分するのかわかりませんでした。
このタックスアンサーによって、原則として「雑所得」とすることが明らかにされました。
節税という観点からは「事業所得」の方が都合が良いのですが、「原則として雑所得」です。
なので、事業所得にするにはそれなりのハードルがあります。
詳しくは、「9 こんなに違う! 雑所得と事業所得」に書いていますので、後ほどご覧ください。
ちなみに、このタックスアンサーとは、「国税庁の公式見解」を示すものであって、100%正しいものではありません。
あくまで税金は、「法律」によって決まります。
タックスアンサーは、法律でも何でもなく、国税の法律の執行機関である国税庁の一見解にすぎません。
つまり、最終的な法律の解釈を決定するのは、裁判所ですから、最高裁判所の判決によってタックスアンサーの内容がひっくり返ることもあるということです。
とは言え、一国民としては、一応この国税庁の見解に従うしかありません。

どんな人が確定申告が必要なのか?

「雑所得」に区分する場合は、1年間の仮想通貨による所得(利益)が20万円以下で、かつ給与所得だけで他に所得がない場合は、確定申告する必要はありません。
つまり、サラリーマンの方で、他に副業などの収入がなく、給料以外には仮想通貨による利益があるだけなら、利益が20万円以下なら確定申告は不要ということです。
ただし、医療費控除とか、住宅ローン控除とか、何か別の理由で確定申告をする必要がある場合は、利益が20万円以下であっても、雑所得として計上しないといけません。
厳密には、です。
だけど、実務上は、雑所得が20万円以下なら、他の理由で確定申告しても、突っ込まれることはまずありません。
後から税務署が気づいても、ほぼ100%ほっとかれます。
この辺は、公には言えない「税務署の本音」の部分です。
少額な間違いは訂正させるのも手間暇がかかるので、たとえ税金が過少になっていても見て見ぬ振りをされます。
なお、仮想通貨の利益を「事業所得」に区分する場合は、利益が20万円以下であっても、たとえ損失であっても確定申告しないといけません。

雑所得と事業所得のどちらが得か?

雑所得と事業所得には、節税という観点でとても大きな違いがあります。
まず、「事業所得」とは、その名の通り事業を行ったことによる所得で、個人事業主の本業の所得は基本的に事業所得になります。(不動産に関する所得は不動産所得になるなどの例外はあります。)
「雑所得」は、事業所得や不動産所得などの所得に区分されない所得が最後に行き着く所ですので、いわゆる「その他の所得」という扱いです。
それで、節税という観点での大きな違いの一つ目は、「損益通算」できるかどうかです。
これは、その所得で損失(赤字)が出たときに大きな違いが出ます。
事業所得の場合、まず事業所得の中で仮想通貨の損失とその他の事業の利益で相殺します。
相殺しきれずに、事業所得自体が赤字になったときは、事業所得以外の所得と相殺していきます。
例えば、不動産所得や給与所得と相殺します。
逆に、事業所得で利益が出ても、不動産所得が赤字の場合は、事業所得と不動産所得を相殺できて全体の利益を下げることができます。
しかし、雑所得の場合は、雑所得の中でしか相殺できません
雑所得に区分した仮想通貨の利益が出ても、事業所得や不動産所得の赤字と相殺できないし、仮想通貨が赤字になっても、事業所得や給与所得などの黒字と相殺することができません。
同じ雑所得に区分される「ちょっとした原稿料」とか、副業の利益などと相殺するだけになります。
これが大きな違いの一つ目の「損益通算」です。
次の大きな違いは、「青色申告特別控除」です。
青色申告の届け出を出し、複式簿記などの記帳の基準を満たせば、所得から65万円を控除(差し引く)ことができます。
簡単な記帳の場合でも10万円は控除されます。
ところが、この青色申告特別控除は、事業所得または不動産所得からしか控除できません。
つまり、仮想通貨の利益を雑所得に区分した場合は、青色申告をしていても65万円または10万円の青色申告特別控除ができないということです。
だったら、「仮想通貨の利益は事業所得にしたい!」と思いますよね。
でも、安易にそれをすると、後で痛い目に遭います
ひどい目に遭わないために、後の「仮想通貨の利益を事業所得するには?」を読んでください。

具体的な税率は?

所得税の税率は、分離課税に対するものなどを除くと、5%から45%の7段階(平成19年分から平成26年分までは5%から40%の6段階)に区分されています。
課税される所得金額(千円未満の端数金額を切り捨てた後の金額です。)に対する所得税の金額は、次の速算表を使用すると簡単に求められます。
ただし、これはあくまで国税である所得税の税率で、この他に地方税である住民税が10%かかります。
ですので、ざっくり説明すると下の税率にプラス10%した税率があなたの負担する税率になります。
なんと、最高税率で55%です!
[surfing_su_note_ex note_color=”#f4f4f4″]

課税される所得金額
税率
控除額
195万円以下
5%
0円
195万円を超え 330万円以下
10%
97,500円
330万円を超え 695万円以下
20%
427,500円
695万円を超え 900万円以下
23%
636,000円
900万円を超え 1,800万円以下
33%
1,536,000円
1,800万円を超え4,000万円以下
40%
2,796,000円
4,000万円超
45%
4,796,000円

[/surfing_su_note_ex]
ざっくり計算してみます。
(実際には、住民税の均等割や事業者の事業税などもあり多少の税負担額は違ってきます。)
例えば、色々な控除を引いた残りの所得(課税される所得金額)が500万円の場合は、
国税の所得税分が、
5,000,000✖️20%ー427,500=572,500円
で住民税10%をプラスすると、
1,072,500円が税負担額です。
それまで所得が500万円で、仮想通貨で500万円の利益が出た場合は、課税される所得金額が1,000万円なので、
国税の所得税分が、
10,000,000✖️33%ー1,536,000=1,764,000円
で、住民税10%をプラスすると、
2,764,000円が税負担額です。
なので、仮想通貨で500万円儲けた場合は、
2,764,000ー1,072,500=1,691,500円
が税負担の増加になります。
つまり、仮想通貨で500万円の利益が出ても、実際に手元に残るお金は、
5,000,000ー1,691,500=3,308,500円
です。
手元に残るお金は、利益の66%になるということですね。
これが多いと見るか、少ないと見るかは、あなた次第ですが・・・
税引き後が66%まで下がるなら、何とか税金対策をしたくなるのが人情ですよね。

仮想通貨の利益は、いつ発生したと考えるのか?

タックスアンサーによると、「ビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象」となると書かれているので、「使用」したときに利益を認識します。
この「使用」という言葉はどこまで含むのか、という疑問がありますが、それに対する答えが、2017年12月1日に公表された国税庁の情報(FAQ)です。
国税庁の個人課税情報(FAQ)はこちら
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/171127/01.pdf
このFAQによると、仮想通貨の「使用」とは、
仮想通貨の売却、仮想通貨での商品の購入、仮想通貨と仮想通貨の交換が例示されています。
この他に例えば、誰かに報酬や給料をビットコインなどの仮想通貨で支払った場合も、当然「使用」にあたります。
また、仮想通貨の売買や使用の際の利益と損失は、1年間通じで合算して計算しますし、同じ所得区分内であれば、他の利益と損失と相殺することもできます。
次に、具体的な計算方法と考え方を説明していきます。

具体的な利益の計算方法

仮想通貨の売買

保有する仮想通貨を売却(日本円に換金)した場合、その売却価額と仮想通貨の取得価額との差額が所得金額(利益)になります。
(複数回に分けて仮想通貨を買ったときの取得価額の計算方法は後ほど。)
10月に、2,000,000円で2ビットコインを購入し、11月に1ビットコインを1,500,000円で売却した場合、
1ビットコインの取得価額は、
2,000,000÷2BTC=1,000,000円
所得金額(利益)は、
1,500,000ー1,000,000=500,000円

仮想通貨での商品の購入

保有する仮想通貨を商品購入の際の決済に使用した場合、その使用時点での商品価額と仮想通貨の取得価額との差額が所得金額(利益)になります。
10月に2,000,000円で2ビットコインを購入し、11月に150,000円の商品購入に0.1ビットコインを支払った場合、
1ビットコインの取得価額は、
2,000,000÷2=1,000,000円
所得金額(利益)は、
150,000ー1,000,000×0.1BTC=50,000円

仮想通貨と仮想通貨の交換

保有する仮想通貨を他の仮想通貨を購入する際の決済に使用した場合、その使用時点での他の仮想通貨の時価(購入価額)と保有する仮想通貨の取得価額との差額が、所得金額(利益)になります。
10月に2,000,000円で2ビットコインを購入し、11月にイーサリアムの購入の決済(決済時点のイーサリアムの時価200,000円)に0.1ビットコインを支払った場合、
1ビットコインの取得価額は、
2,000,000÷2=1,000,000円
所得金額(利益)は、
200,000ー1,000,000×0.1BTC=100,000円

仮想通貨で報酬や給料を支払った時

(※これは国税庁のFAQに例示はありません。)
保有する仮想通貨を報酬の支払いに使用した場合、その使用時点での仮想通貨の時価と取得価額との差額が所得金額(利益)になります。
10月に2,000,000円で2ビットコインを購入し、11月に取引業者への外注費の支払い(決済時点の1ビットコインの時価1,500,000円)に0.1ビットコインを使った場合、
1ビットコインの取得価額は、
2,000,000÷2=1,000,000円
所得金額(利益)は、
(1,500,000ー1,000,000)×0.1BTC=50,000円

仮想通貨が分岐(分裂)した時

仮想通貨の分岐(分裂)に伴って、新たに誕生した仮想通貨の分配を受けた(取得した)時は、所得(利益)は発生したとみなしません。
分岐した瞬間には、新たに誕生した仮想通貨の取引相場がまだ存在してないため、価値を有していなかったとみなすためです。
利益が発生するのは、その分配を受けた仮想通貨を売却や使用した時です。
その際、その仮想通貨の取得価額は、0円と考えます。

 仮想通貨のマイニングをした時

仮想通貨をマイニングによって取得した時は、収入金額(マイニングによって取得した時点でのその仮想通貨の時価)から、必要経費(マイニングするために使った費用)を差し引いた差額が、利益になります。
なお、このマイニングによって取得した仮想通貨を売却・使用した場合に、利益を計算する際の取得価額は、マイニングによって取得した時点での時価になります。
10月にマイニングで1BTCを取得(時価1,000,000円、必要経費500,000円)した場合の利益は、
1,000,000ー500,000=500,000円
そのマイニングで取得した1BTCを11月に1,500,000円で売却した場合の利益は、
1,500,000ー1,000,000=500,000円
マイニングから売却までのトータルの利益は、
500,000+500,000=1,000,000円

仮想通貨の取得価額はどう計算するのか?

これまで述べたように利益を計算するには、必ず取得価額を計算する必要があります。
何度も仮想通貨を購入したり、売却したりを繰り返すと、この取得価額の計算がかなり面倒です。
実際には、エクセルなどに数式を入れれば計算そのものは自動でできますが、取得数と取引レートをエクセルに記入するだけで大変な手間がかかると思います。
今後、取引所などで簡単に計算できる仕組みやツールが開発されると思いますが、それまでは面倒な手作業を必要としそうです。
それで、取得価額の計算方法には、総平均法と移動平均法の2種類があります。国税庁は移動平均法を勧めていますが、総平均法も毎年、総平均法で計算するならオッケーとのことです。
計算手順自体は、総平均法が簡単です。
ちなみに、総平均法と移動平均法でそれぞれ取得価額を計算し、利益を出していくと、多くの場合、異なった計算結果になります。
ですので、どちらかの計算方法を継続して使う必要があります。
(有利な方に毎年変えるのはダメです。)
[surfing_su_note_ex note_color=”#f4f4f4″]
(事例)
8月、2,000,000円で4ビットコインを購入(1BTC当たり500,000円)
9月、1,000,000円で1ビットコインを購入(1BTC当たり1,000,000円)
10月、1ビットコインを1,500,000円で売却
11月、2,500,000円で2ビットコインを購入(1BTC当たり1,250,000円)
[/surfing_su_note_ex]

<総平均法での取得価額の計算手順>

①1年間に取得したビットコインの取得価額の総額を計算
2,000,000+1,000,000+2,500,000=5,500,000円
②1年間に取得したビットコインを計算
4BTC+1BTC+2BTC=7BTC
③ ①÷②を計算
5,500,000÷7BTC=785,714円
これが1BTCあたりの取得価額となる。その年のビットコインの売却や使用の際はこの取得価額を使って利益を計算する。

<移動平均法での取得価額の計算手順>

9月末時点での1ビットコイン当たりの取得価額
(2,000,000+1,000,000)÷(4BTC+1BTC)=600,000円/BTC
→10月の売却時はこの取得価額を使って利益を計算
10月に1ビットコインを売却した後のビットコイン全部の簿価(時価じゃないよ!)
600,000円×(5BTCー1BTC)=2,400,000円
11月に2ビットコイン購入した後の1ビットコイン当たりの取得価額
(2,400,000+2,500,000)÷(4BTC+2BTC)=816,666円
→例えば12月にビットコインを売却・使用した場合はこの取得価額を使う。
移動平均法は、少しわかりにくいと感じたかもしれません。
時価、簿価、取得価額という概念が整理されていないと難しいかもしれないですね。

どんなものが経費として計上できるか?

雑所得であろうが事業所得であろうが、仮想通貨の売却や使用に必要な費用は、経費として収入から差し引くことができます。
仮想通貨の売却や使用の必要経費として計上できる可能性があるものとしては、
[surfing_su_note_ex note_color=”#f4f4f4″]
・仮想通貨取引所での取引手数料
・仮想通貨取引所への入出金手数料(振込手数料など)
・仮想通貨に関する書籍代
・仮想通貨の有料情報(有料メルマガや有料会員サイトの利用料など)
・仮想通貨に関するセミナーへの参加費とそれにかかる交通費や宿泊費
・仮想通貨取引に必要な機器代(パソコンなど(仮想通貨取引専用のパソコン以外は費用を按分する必要がある))
・事業所得に区分した場合は、仮想通貨取引に必要な事務所の費用、必要な水道光熱費
[/surfing_su_note_ex]
しかし、これらは必ず経費にできるわけではなく、仮想通貨の売却や使用に必要な支出だった場合だけ経費にできます。
(要は、「必要な支出だった」と理屈を付ければいいということです!)
経費にする場合は、ちゃんと経費として支出した証拠は残しておいてください。
手数料がかかった記録や請求書、領収書、振込記録、クレジットカード明細などです。
基本的に紙の状態で保存しておく必要があります。

こんなに違う! 雑所得と事業所得

仮想通貨で損失が発生したときは?

雑所得に区分した場合は、同じ雑所得の中でしか利益と損失の通算(相殺)ができません。
例えば、仮想通貨の種類が違う場合は、同じ雑所得ですので通算することができます。
また、サラリーマンの方の副業の利益など、同じ雑所得であれば、副業の利益と仮想通貨の損失を通算することもできます。
一方、事業所得に区分した場合は、不動産所得や給与所得などの他の所得と通算することができます。
これが雑所得と事業所得の大きな違いです。

仮想通貨の損失は翌年に繰り越せないのか?

これも雑所得に区分した場合は、損失を翌年に繰り越すことはできません
しかし、事業所得に区分した場合は、青色申告の届け出を出していれば、翌年以後3年間にわたって繰り越すことができます。
翌年以降の所得金額から控除していくことになります。
これも雑所得と事業所得の大きな違いです。

仮想通貨の所得に青色申告特別控除は可能か?

仮想通貨の所得を事業所得に区分している場合は、青色申告の届け出を出し、複式簿記などの記帳を行うことで、65万円または10万円の青色申告特別控除を受けるることができます。
複式簿記を行い貸借対照表、損益計算書を作成すれば65万円、そこまで記帳をきっちりしていない場合は10万円を控除できます。
なお、青色申告をできるのは、事業所得、不動産所得、山林所得のある人だけです。
ですので、仮想通貨を雑所得に区分し、他に事業所得などがなければそもそも青色申告できないですし、たとえ、青色申告をしていても雑所得の部分については青色申告特別控除を適用できません。
つまり、雑所得の所得からは、65万円または10万円の青色申告特別控除を差し引くことはできないのです。

仮想通貨の利益を事業所得にするには?

事業所得に区分できるかどうかは、結構大きな問題です。
問題というのは、事業所得に区分したい納税者側と、事業所得ではないと主張する税務署側で裁判になることがあるということです。
直接、事業所得と雑所得の争いではないですが、最近、所得の区分で大きな話題になったのは、競馬のシステム取引でした。
この方は、プログラムを使って大規模な競馬のシステム取引をしていました。
馬券の購入に約28億7千万円、当たり馬券の払戻しが約30億円なので収入としては1億円ちょっと。
彼は、当然、外れ馬券も含めた約28億7千万円を経費にして「雑所得」として確定申告しました。
彼の場合は、事業所得じゃなくて雑所得でも大差なかったので、雑所得として区分したのだと思います。
しかし、税務署側は、競馬の利益は「一時所得」であり、経費になるのは勝った馬券の馬券代だけだ、と主張してきたのです。
大量に購入している他の外れ馬券は経費には認めない、という主張でした。
この税務署の主張だと、競馬の収入は一時所得であり、当たり馬券の購入費用である約1億3千万円しか経費にならないことになります。
これについては最高裁まで争いが続き、結果として、納税者側の主張が認められました
外れ馬券も経費にすることができる雑所得に区分されたのです。
この事例のように、所得区分によって税金額が大きく変わることがあります。
仮想通貨の所得については、仮に事業所得に区分されれば、サラリーマンの方は損失が出た年は、給与所得と相殺され、給料から天引きされていた源泉所得税の還付が受けられることになります。
また、青色申告特別控除や損失の3年間の繰越も認められ、雑所得とはえらい違いが発生します。
ですので、国税庁はタックスアンサーで、「事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されます。」と明記しています。

事業所得にする要件とは?

国税庁のFAQでは、「事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合」の事例として、
[surfing_su_note_ex note_color=”#f4f4f4″]①事業所得者が事業用資産として仮想通貨を保有し、事業の決済手段として使用する場合
②仮想通貨取引の収入によって生計を立てていることが客観的に明らかである場合[/surfing_su_note_ex]
と2つの例を示しています。
①に該当するパターンは、現時点ではほぼないと思いますので、②に該当するかどうかがポイントだと思います。
これまでの国税庁の見解や国税不服審判所の裁決事例、裁判所の判例を参考にすると、②の判断基準として考えられるのは、
[surfing_su_note_ex note_color=”#f4f4f4″]・仮想通貨取引にどのくらいの時間をかけているか? 社会的通念として一つの事業と言えるくらい時間をかけているのか?
・仮想通貨取引による収入が自分の生活を維持できる以上のものになっているか?
・仮想通貨取引以外に他の仕事に従事しているか?
・仮想通貨取引の頻度はどのくらいか?[/surfing_su_note_ex]
というようなところが客観的な判断基準になってくると思います。
つまり、社会的に見て、事業と呼べるくらい時間とお金と集中力を注ぎ込んで仮想通貨取引をやっているのか、というところが判断のポイントになります。
ただ、国税庁が②を例示したのは結構、アグレッシブだと思いますね。
FXの専業トレーダー並に仮想通貨の取引をしていれば、事業所得と認められてしまうことになるので、かなり踏み込んだ見解だと思います。
ただし、少なくとも、サラリーマンで普通に仕事をしている人は、ほぼ100%事業所得と認められることはないと思います。
(これは国税とガチンコで戦った場合です。所得が少額でほおっておかれる場合は別ですね。)

仮想通貨が課税されない方法

そんな方法があるのか?と思うかもしれませんが、要は仮想通貨を「使用」しなければよいということです。
他の仮想通貨に交換もせずに、保有しているだけであれば、課税されません。
例えば、保有している状態で、海外に移住し日本の非居住者になって、それから「使用」すれば日本から課税されることはありません
居住している国の税法に従って、その国で課税されるだけです。
所得税が安い国、仮想通貨取引の課税が安い国だったら、かなりの節税になりそうですね。

海外の取引所での取引はバレないのか?

まず一般的な話をすると、国内の取引所は日本の税法に従うので、国税局や税務署の「質問検査権」によって、税務調査を受けます。
そこから取引内容がバレます。
「質問検査権」はあくまでその取引所を運営している会社が、国税に関する調査を受けて開示する情報なので、その取引所のすべての情報が税務署に流れるわけではありません。
少なくとも建前上は、その取引所を運営している会社の国税の申告に関連した情報だけです。
なので、国内の取引所からどの程度の情報が国税局に渡るかはよくわかりません。
ただし、国税局の査察部(いわゆるマルサ)が動くと、裁判所の令状を持ってきますので、すべての情報が筒抜けになってしまいます。
そういう意味でも、国内の取引所については、取引履歴や円転したときの情報すべてが税務署にバレると思っておいた方が無難でしょう。
では、海外の取引所についてはどうなのか?
海外の取引所については、日本の法律は効果が及ばないので、日本の国税当局には調査権限がありません。
「協力してください。」という任意の要請しかできません。
ですので、海外の取引所については、取引内容がバレない可能性はあります
ただし、海外の取引所が存在する国の政府が、日本の政府(国税庁)と協力して、その国の政府の調査権限で海外の取引所を調査する可能性はあります。
申告するかどうかはその人の判断ですが、この辺のリスクはしっかりと認識しておいてください。

確定申告しないときの罰則・ペナルティは?

世間では「脱税」という言葉をかなり広い意味で使っていますが、実際に新聞報道する際は、「脱税」という言葉を使う範囲を厳密に定義しています。
「脱税」は、あくまでも査察部が令状で動いて、検察に告発した場合です。裁判で有罪判決が出るまでは「脱税容疑」です。
検察に告発されないけど、新聞報道される場合がありますが、その場合は「所得隠し」と言われます。
やっていることは、意図的・作為的に税を逃れたという同じ行為ですが、裁判までいったら「脱税」、裁判まで行かず税務署や国税局で済めば「所得隠し」になります。
この「脱税」と「所得隠し」の違いは、隠していた金額の大小と裁判で国が勝てるかどうか、です。
変な話ですが、隠していた金額が巨額でも、裁判で国(国税・検察)が勝てない見込みだと、告発せずに、税務署の処理で終わらせることも、実はよくあります。
なお、意図的・作為的に税を逃れた証拠はなく、単なるミスの場合は、「申告もれ」と表現されます。
確定申告をしなかったときの罰則・ペナルティをまとめると、
[surfing_su_note_ex note_color=”#f4f4f4″]①刑事罰:所得税法、法人税法に基づく懲役、罰金刑です。
②行政罰:過少申告加算金、無申告加算税、重加算税、延滞税などの本来の税金に上乗せして払うことになる税金です。[/surfing_su_note_ex]
①の刑事罰が適用されるのは、査察部(マルサ)が動いたときだけです。裁判によって決定されます。
それ以外の国税局、税務署だけによる処分の場合は②の行政罰だけです。
行政罰だけとは言っても、仮装隠蔽行為による重加算税や延滞税がかかると、本来の税金の2倍の税金を支払う場合もあるので、かなり大変です。

何年で逃げ切れるのか?

非常にひんしゅくなタイトルですが、知りたい人もいると思うので・・・
通常の課税の時効は5年です。
例えば、2017年分の確定申告の申告期限は2018年3月15日なので、2023年3月15日を過ぎれば、2017年分の税金は時効になります。
ただし、これは申告してなかったり、税金を過小に申告していた場合の時効ですので、例えば、すでに確定申告していて税額が確定している場合は違ってきます。
「税金の徴収」の時効はまったく別の話になります。
確定した税金の徴収については、支払い能力がある限りいつまでも追いかけられると思ってください。
申告することで初めて税額が確定するので、申告していない場合(申告額が過小の場合)は、通常は5年で時効を迎えます。
ただし、仮装隠蔽行為によって税を逃れていた場合は、時効が5年から7年に伸びます。
延滞税も最大7年間課税されるので、利子に相当する延滞税だけでもすごい金額になったりします。

その他 Q&A

仮想通貨の消費税は?

仮想通貨の取引については、改正資金決済法により2017年7月1日から非課税になりました。
これによって、ようやく仮想通貨が法律上定義されました。
仮想通貨の取引については、事業者も消費税を考えなくてよくなりました。

FXと同じ申告分離課税にはならないの?

FX(外国為替証拠金取引)は、当初は雑所得で総合課税の対象でしたが、法改正で申告分離課税になっています。
これは、FXが金融商品取引法に規定され、租税特別措置法によって申告分離課税にすることが規定されたからです。
仮想通貨の取引については、金融商品取引法にも規定されていないので、当然、申告分離課税の対象ではありません。
将来的には、FXと同じように申告分離課税の対象になる可能性はありますが、今は対象外です。

仮想通貨を円以外の外貨に換えたときは?

仮想通貨を円以外の外貨に換えたときは、その外貨の対円レートで評価し利益を認識します。
対円レートは、通常は、銀行間取引のTTM(仲値)が使われます。
ですので、仮想通貨を外貨に換えた人は、利益の計算の手間が増えます。
その外貨を円に換えたときは、またその時の対円レートと、先ほどの対円レートの差額で、利益を計算するので、手間が大変です。

ビットコインを他の仮想通貨に換えたときのレートがわからない場合は?

大量の取引を行った人が一番困るのがこれだと思います。
FXの取引所のように詳細な取引履歴・レートが取得できない取引所が大半のようです。
また1日の値動きが激しいので1日の終値を使うことも難しかもしれません。
このような場合は、最も合理的と思われるレートを使うしかありません。
取引の日時がわかっていれば、取引に使った取引所のレートか、一般に公開されているレートを使えばいいです。
仮に、時分秒までの詳細なレートがわからなければ、最悪の場合、1日の平均値などを代表値として使うしかないと思います。
税務署側も正確なレートを把握できないので、今入手できるレートを近似値として使うしかありません。
ただし、近似値として採用するレートを、取引の都度、自分に有利なように(税金が安くなるように)採用することはダメです。
同じやり方、基準で近似値を採用してください。

仮想通貨を法人名義で使用・取引している場合は?

法人名義で仮想通貨を取引している場合は、法人の事業の一環になるので、利益も損失も法人全体で通算することになります。
期末時点での仮想通貨の評価損益の計上は、今の法律上は必要ないと思われます。
今後、仮想通貨の税金の法的整備が行われる際には、期末時点の評価が必要になってくる可能性があります。

まとめ-どんな人が税務調査されるのか?

たくさんの日本人が仮想通貨で利益が出ている状態ですので、
「自分は確定申告しないとヤバいのか?」
「後で税務調査されるのか?」
と心配で夜も眠れない人もいるかもしれませんね。
結論から言うと、利益がたくさん出ている人は、何らかの形で調査されることになると思います。
調査される金額の基準がいくらぐらいかは、正直わかりません。
結局、税務署も限られた人員と限られた時間の中で税務調査を行うので、調査を行う必要がある人がどの程度のボリュームがあるかで、調査の基準はかなり変動します。
原則として、利益が多くあって追徴税金がたくさん出そうな人から、優先的に調査していきます。
恐らく、FX長者がたくさん誕生した時のように、今回の仮想通貨バブルも、3年後ぐらいに、全国で一斉に仮想通貨取引についての税務調査が行われると思います。
確定申告してすぐに税務調査に来るわけではありません。
通常は、3年程度泳がせてから税務調査をします。
それまでは、国税庁が音頭を取って、ひたすら情報収集して調査対象者を絞っていくことになります。
そして、追徴金額が多い人は、見せしめとして査察部(マルサ)が動いて、告発、有罪判決に持っていくのではないかと予想しています。
国税庁は、悪い奴を懲らしめてその他大勢の戒めにするという「一罰百戒」の思想を公式に掲げているので、目立つ人が何人か血祭りに上げられるかもしれませんね。
儲かった人は、ご注意を!
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